茶の湯の裂地

                           

松井緞子(まついどんす)
名物裂の一。金茶地に、萌黄で雲を織り出した緞子

三雲屋緞子(みくもや どんす)
名物裂の一。萌黄地に、金茶の緯糸で青海波地文に宝尽しを散らした文様を織り出した緞子。萌黄地青海波宝尽文。名称の由来は、所持者の名前からと思われる。中興名物「染川」「秋の夜」の仕服に用いられる。明代の製。『古今名物類聚』所載。類裂に、同色同紋の「本能寺緞子」があるが、時代が異なる。

水間間道(みずまかんとう)
名物裂の一。白地に、萌黄と緋色で格子縞を織り出した間道

莫臥爾(もうる)
名物裂の一。糸に金や銀を巻きつけた撚糸(モール糸)を織り込んで文様を出した織物。モール。経は絹糸で、緯に金糸を用いたものを金モール、銀糸を用いたものを銀モールといい、のち金糸または銀糸だけを寄り合わせたものをいう。莫臥児、莫臥爾、回々織、毛宇留、毛織などの字が当てられる。正徳2年(1712)頃に成った寺島良安の『和漢三才図会』に「按莫臥爾天竺国名、所出之綺、似緞閃而有小異、本朝所織者亦不劣」とあり、インドのモゴル(ムガール)帝国(1526〜1857)の所産で、緞子に似ているが少し異なるとしている。わが国には戦国時代から桃山時代にかけて、南蛮貿易によって舶載された。モールの語はポルトガル語の「mogol」からという。『古今名物類聚』所載。

万代屋緞子(もずやどんす)
名物裂の一。本歌は、藍海松茶地に、黄で唐草紋を織り出した緞子。あるいは、茶地に、雲龍丸紋を織り出したもの、といわれる。東京国立博物館(毛利家旧蔵)のものは、薄萌黄地に、金茶糸で青海波紋と梅花紋を織り出したもの。経四枚綾地に緯八枚綾で文様を織り出している。堺の町人で利休の娘婿である万代屋宗安の所持に因む名という。

望月間道(もちづき かんとう)

名物裂の一。織部流の茶人望月宗竹(?〜1749)の愛用裂とも望月茶壷の裂とも伝えられているが、望月間道と呼ばれるものには数種類ある。赤茶地に白と藍の細い堅縞と白の横縞で格子となった部分と、藍の太縞の両端にしろの中縞に並べた部分を織り出した間道。 経・緯糸に蘇芳・花色・白の三色が用いられ、蘇芳地に花色と白の格子と縞で織り出したもの。藍と茶と白の縞の繰返しで、藍地には細い白の縦縞と真田を織出し、茶地には茶と白の小格子を織り出したものなどがある。『古今名物類聚』所載。


紋海気(もんかいき)
名物裂の一。海貴、海黄、改機とも書く。元亀(1570〜1573)、天正(1573〜1592)の頃から慶長(1596〜1615)末年までの間にオランダ人によって舶載されたとされる。経緯糸に本練絹糸で、緯糸は経糸の倍の太さを用いた平織。滑らかで光沢がある。無地のものを海気といい、文様を織り出したものを紋海気という。紋の部分を地の部分より織糸を疎らにすることにより紋を表している。茶入仕服の裏裂として用いられた。『古今名物類聚』所載。なお、江戸時代に甲斐国(山梨県)の郡内地方で生産された甲斐絹というものがあるが、これは海気に倣って織り出した物。

                           


 
 
 
 

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